深夜0時を回っても疲れすぎのせいか、なかなか寝付かれません。1時すぎころようやく眠りに就いたようです。真夜中に目が覚め自分の置かれている状況がよく分からずきょとんとする。こんな瞬間が山爺は好きです。
時計を見るとまもなく5時で周りも薄明るくなってきました。え~い起床だ!早朝4時45分に起きてしまいました。
古い方の残置ペットボトルからアルミ食器に水を入れて表に出、洗面をします。気温は12℃を指しています。5月にしては暖かい。今日も暑くなるのかな。と嫌な予感がよぎります。
昨日予想以上に体力を使ったのでイマイチ疲労が抜けていないようだ。どうしよう、このまま下山するか思案するが、せっかくここまで上がってきたんだ、ダメなら途中エスケープルートもあるさと、登山続行することに決めた。
昨日の残りのご飯に水を入れて即席味噌汁2袋を投入し煮込みます。粗末な朝食ですが山爺は粗食に慣れているので食べ物に贅沢には出来ていません。お袋さまから幼少の頃より『男が食べ物のことでガタガタ言うな、みっともない』としつけられてきたのでそれが大いに影響しているのでしょう。
大体に我々団塊世代は幼少期から粗食に慣らされていました。あの悪名高き給食!カチカチバサバサ、コッペパンに脱脂粉乳ミルク。勿論砂糖なんぞ入っていない。油でギトギトのアルミ食器に大ぶり野菜てんこ盛りの煮物。ろくに出汁なんか効いちゃいない。それでも食べないと教師が食えと強要、そんなことが当たり前として育った世代です。授業中にふざけるとビンタを食らわす教師もいました。今なら暴力教師で懲戒免職だろうね。
だからいまでも美食家と称し、うんちくを垂れる人々を見ると軽蔑します。北大路魯山人は豚の化身にしか見えません。・・・似てませんか豚に!・・・当然漫画の美味しんぼも大げさな表現が滑稽だからと見るだけです。味に命をかけると称して格好つけて食材の良いところだけ使いあとは捨てて無駄に浪費する調理人も私は軽蔑の対象です。もともと食物は人間の生きる大切な糧のはず、それをいたずらに無駄にして、何が料理家だ!と。
少ない予算で制作できるためかテレビ番組に食べ歩き番組が多いが、以前あるラーメン屋探訪番組でのこと。その店は醤油や胡椒といった調味料をまったくテーブルに置かないのが自慢の店で店主曰く。『俺の味をいじられてはこまるからね』だって。
何を偉そうに、たかがラーメンだろうが、大きなお世話だ。俺の味なんか勝手に決めるなと言いたい。人の味覚は千差万別であることがまるで分かっていない。ここにも自分が客商売をしていることを忘れている人がいる。困ったもんだ。また、そういう店にありがたがって行列を作る人々の神経も疑いたい。
そこへ行くとタイのラーメン屋は偉い。ラーメンは茹でた麺に出汁つゆをかけただけの物をお客に提供する。テーブルに醤油・砂糖・酢・唐辛子その他の調味料が沢山置いてあり客が自分の好みに合わせて味付けをして食する。これが最も理想の料理ではないか。
タイに仕事で長期滞在したとき、現地にも少し慣れてきたので生意気になり日本レストランでの食事から現地の食堂に勇気を出して入りラーメンを注文したらそれが出てきた。事情をしらない山爺は出汁つゆだけで懸命に食べていた。妙にまずいので変だなあと思っていると店の人が手振りで教えてくれて大笑いしたことがありました。
あはは!また話が横道にそれました。話を本筋に戻します。
朝食も終えたので残置ペットボトルを鍋にあけて煮沸してからしばらく放置、水筒へ入れ今日の水を確保しました。さてあとは荷造りです。一人をいいことに床面いっぱいに散らかし放題に散らかしたので回収が大変です。ようやくパッキング終了。
朝のお勤めのためトイレに向かう。用便の後、例のミニスプレーでシュッシュッシュ!いやあこれはいい!予想以上の効果です。
携帯ウオッシュレットも世の中にあることはあるのですが概して高額なものが多いし大きくてトイレに持ち込むのもなんか恥ずかしい。そこへ行くとこれは¥100だしポケットに入る。こういう悪知恵を思いつく山爺は我ながら天才です。自分自身に尊敬するね。
山に限らず今後、常々持ち歩こうと思う次第であります。以上、新技術の試行結果報告でした。
昨日登れなかった三ッドッケ山まで地図によれば登り20分とある。ザックを山小屋に置いて空身で往復することにした。往復1時間もあれば十分だろう。午前6時15分出発、空身なので順調に高度を稼ぐ。10分、20分経ってもまだまだ登りが続く。おかしいなあ、もう頂上へ出ても良さそうだ。出発してから30分が経過してようやく山頂らしきピークに着いたがどこにも標識がない。何だ、ここが頂上じゃないのか。
そこを通過し先を見ると一旦大きく落ち込んでそれから先にもう一つのピークがある。どうもあれが山頂らしいが、あそこまでは有にあと20分は掛かりそうである。
そこまで往復すると今日のこれからの行程に差し障りが起きる。一瞬、今回はこの山だけで下山しようかとも思ったが思い直し引き返すことにした。・・・ここが三ッドッケ山の最初のピークだったことが蕎麦粒山方面からの眺めで分かった。
それにつけてもおかしいのは地図に表記されている標準コースタイムである。20分だと走らない限り無理だ。昭文社さん!奥多摩地図に記載されているタイムは全般的にハードじゃないの?奥多摩はファミリーが多く訪れるので見直しを要望します。山屋の生意気な連中の言うことを鵜呑みにしてはいけませんよ。彼らは何かと自分を鼻にかける傾向にあるのだからして。
【山爺の一口メモ】
ドッケとは山の地域を表す言葉で山の尖ったところの意。
芋ノ木ドッケ 三ッドッケ 高ドッケ などが有名
7時15分に山小屋に戻りザックを背負い一路仙元峠を経て蕎麦粒山へ向け出発する。仙元峠までは標高差がないのでほぼ平坦な山道だ。歩き出して30分もすると猛烈に眠気が襲ってきた。足元がふらつき、なんとも辛い。若い時に南アのスーパー林道をその状態で無理して半分寝ながら歩いていたら側溝にハマりひどい目にあったことがあるので少し睡眠をとることにした。
木陰を探してしばし昼寝をすることにする。時折りそよ風が吹いてくるので絶好の昼寝日和だ。こんなことが出来るのも単独行のなせる技であろう。ほんの10分寝たかと思ったが覚めて見ると30分が過ぎていた。でもこれで頭はすっきりした。この昼寝により爾後眠くなることはなくなった。
御神木のようなブナの木?を見つけた。大きな木であり枝ぶりも良い。しばし見とれてそれを口実に休憩をする。傍らに可憐な黄色い花が咲き誇っている。(後ほど調べるとミヤマキンバイと思える)
午前8時50分仙元峠に到着。昔は奥多摩から秩父に抜ける唯一の間道だったそうだが今は落ち葉に埋もれて道らしきものが確認できない。地図には秩父方面についてはしっかり道が記載されれいるので少し降りれば道があるのかな?。
ここからは蕎麦粒山の険しい登りとなる。蕎麦粒山を迂回する道もありましたが、ここを省略するわけにはいきません。休み休み高度を上げてゆきます。
9時20分ついに今回の主目標である蕎麦粒山山頂にたどり着きました。
山頂は静かで誰もいません。展望はあまり望めませんでしたが狭く、いかにも山頂といった感じの場所でした。
さて次は日向沢の峰~踊平を目指します。地図上には水のマークもあるので少し回り道をたどれば水も手に入るかもしれません。
蕎麦麦山からの下山を開始しましたが、道そのものは岩場もなく歩きやすいのですがすごい急坂がまっすぐ延びています。まさにスキーの直滑降です。傾斜30°くらいかな?下手すると転げ落ちてしまいそうです。
反対側のピークへの登り途中から撮影した蕎麦粒山です。いやあ下りでよかったわ。ここ登るの容易ではありません。なんか見た目が笠取山に似ている。
いよいよ山道は最後の目標である川苔山へと大きく回り込むように続いています。
右に視線をずらすと芋ノ木ドッケ~長沢背稜を伝って酉谷山、三ッドッケへと続く縦走路が確認できました。今度歩いてみたいなあ。と羨望です。いけるかなあ。行程ずいぶんありそうだなあと一人ごちました。
その右側に今日歩いた山々が姿を見せています。中央のとんがりが三つある山が三ッドッケ山です。
漢字の山はああいった山の形をヒントに考案したんだろうねえ。山の字そっくりの形です。その右にポコンと飛び出ているのが蕎麦粒山です。いやあ歩いたもんだ。山爺もやればできるではないか。
傍らには紫色の花も咲いております。後ほど図鑑で調べたらミヤマスミレのようでした。
さらに進むとシロヤシオやヤマツツジが咲き誇り山爺をお出迎えです。三ッドッケ山頂付近では咲いていませんでした。三ッドッケ山は標高1576m、ここいら辺は1200mだから気温の差でこうなるのかねえ。
大眺望といい草花の咲き誇りといいここの登りが結果的には今回の山登りのハイライトとなりました。
周囲の環境は申し分ないのですが、今日はそれにしても暑い。水分補給により水の在庫がどんどん失くなってゆきます。
ペットボトル500mL、2本のうち1本は既に空となりポーチ内のペットボトルも空になりました。
残りは900mL+500mL=1400mLです。
一般的に運動中での水の補給必要量は次の計算式で求めることが出来ます。
行動中の脱水量(㎖)=体重(kg)×行動時間(h)×5(㎖)
少なく見積もってもこの先3時間は行動しなければなりません。残り1400mlでは足りないのは目に見えています。絶対に水場に立ち寄り補給しなければなりません。
さて11時50分ようやく踊平の分岐までやってきました。予定のスケジュールより1時間50分も遅れています。さらにちょいと進み大丹波への分岐地点に到着です。ここを下ると水場があるはずですがなんと踊平~獅子子口間は土砂崩落により通行禁止と立札が!!ガガ~ン!水補給の道はこれで絶たれてしまいました。
仕方なく川苔山への登りへと足を向けます。地図のコースタイムでは1時間で山頂とあります。気を取り直し一歩また一歩と歩を進めます。それにしても暑い、なんてえ暑さだ。・・・この頃下界では30℃をゆうに超えた真夏日であったことを帰宅後知る事になる。
水を飲まないわけには行かないが、がぶ飲みは出来ない。節約しながらちびりちびり飲む。酒じゃあるまいに、ちびりちびりとは情けない。
それにしても山頂が遠い、やっと頂上直下の広場に到着しました。多くの人びとが思い思いに木陰で弁当を広げています。
これまでの静寂な山歩きから現実の世界に戻りました。頂上はここからさらに10分登らねばなりません。ようやく山頂に到着しました。時に13時20分。いやはや奥多摩恐るべし、舐めては、掛かれないことを改めて痛感しました。
川苔山は眺望はあまり良くありません。南側が僅かに広がっています。富士山もこの方向に見えるはずですが、確認できませんでした。
ドライフーズのピラフも持っているのですが水がないので諦めてアンパン4個に行動食を加えて急ぎ遅い昼食をとる。コーヒーも飲みたいが我慢するしかない。15分ほど頂上に滞在し早々に下山することにした。先はまだまだ長いのです。
鳩の巣駅方面の下山口を確認し下山を開始する。コースタイムは2時間なので3時間あれば下山できるだろう。問題は水だ。折りからの暑さで体が水を欲しがる。残りは500mlペットボトル1本しかない。
下山の初めは結構急な道である。だいたい山での事故の大半は下りで起きる。急がず慎重に一歩一歩足を出す。昨日の登り始めの道迷い事変でストック先端のゴムキャップをなくしてしまいました。したがって先端が金属むき出し状態のストックなので先が地べたに潜り込み誠に具合悪い。やはり予備は持たなければあかんとを痛感した山爺でありました。
舟井戸の分岐まで降りてきました。
体力と水があれば本仁田山経由で奥多摩駅に降りるのですが、もう体力も水も残り僅かでまったく余裕がありません。最短ルートの巻道を選択し、ひたすら下降します。だらだらした長い道が延々と続きます。・・・続いたように感じましたが正確なところかな。
途中、分岐でもない場所でも頻繁に標識が出てきますが残りの距離や時間がまったく記入されておりません。標識が出てくるたびに『あと何時間だ!あと何キロだ!』とストックで標識を突っつきながら文句をたれます。ホント!東京都観光協会さん?いくら立派な標識でも”仏作って魂入れず”ですよ、これでは。このブログ読んでいたら改善してね。って読むわけないか。(´・_・`)
いい加減、嫌になってきた頃ようやく木々の間から林道のガードレールが見えてきました。やれやれ、 やっと山ノ神に着いたぞ。あと30分で鳩の巣駅だ。んん!どうせこのコースタイムはおかしい。30分に騙されないぞ、と自分自身に言い聞かせる。
なんだか知らないが猛烈に腹が立っている。水はウエストポーチ内の小瓶にあと一口しかない。ここで飲んだらあと小一時間水無で行動しなければならない。窮地に追い込まれた山爺でありました。♫ ダーンダダダ~ン!ダダダ~ン!(スターウォーズのBGMより)
前方を見ると女性2人が立っていた。たしか川苔山山頂と舟井戸の分岐で見たことがある2人である。女性たちが声をかけてきた。
『あのぉ~すいません、どこから降りてきたんですか』
『舟井戸分岐から巻道を』
『私たち尾根道を降りてきました。すごい道でした。怖かった』
『地図に危険の表示があったでしょう』
『見落としました。でもそれはそれで貴重な体験をしました』
といった会話を交わす。
『私もそちらを通りたかったのだが水が乏しいので迂回しました。これ飲むともう終わり』
『あら!お水分けてあげますよ』
ジャジャーン!地獄で仏、いや女子だから観音様です。きっとこの2人は観音様の化身に違いありません。日頃から神仏を敬う山爺なので観音様か菩薩様が姿を変えて助けに現れたに違いありません。
今回の山旅は水にピンチの連続でした。
①道間違え水浪費・・・人気のない人家に水道と水小屋現る
②避難小屋水場枯渇・・・残置ペットボトルに助けられる
③炎天下で水大量消費・・・親切な山ガールから水おめぐみ
と、その都度、不思議と幸運に恵まれた。これって観音様のお力に違いない。ありがたや、もったいなや、うへぇ~。m(_ _)m
見栄もへちまもありません。この先水なしで無理な行動したらどんなことが起こるかわかりません。ありがたくいただき、早速水分の補給です。これで少し生き返りました。
残り30分だが、どうせいい加減なコースタイムに決まっていると、心に言い聞かせ女子二人と一緒に鳩の巣駅へと降り出す。途中山爺がブログをやっているこのなどのおしゃべりしながら下降を続ける。やがて里の景色が目に飛び込んできた。
やれやれとうとう着いたか。安堵、安堵である。
ところが里に降りてからが一試練、なんと急な坂道であること、足が踏ん張れない。ひいひい言いながら・・勿論女子の前でのこと平静を装いながら駅へと最後のムチを入れる。
17時15分やっと鳩の巣駅に到着しました。
トイレに行き頭から水を被り首筋やら脇の下やら冷却をする。ああ、生き返ったぁ~。
次は自販機に向かいポカリスエットを購入する。山中と違いなんと便利な世界だろうか。金さえ出せばなんでもすぐに手に入る。
駅舎でゆっくり飲もうと思い駅舎に入り電車の時刻を確認すると17時26分の青梅行がある。件の女子2人はお先と言いながら先にホームに入ってしまいました。おやおや時間がない。急いでザックを背負い切符を買おうとするが窓口はシャッターが降りている。
そうです。鳩の巣駅は無人駅なのです。
『ええ~!切符はぁ~どうすんだ』
皆さんはスイカで自動チェックを受け入場している。山爺はそんな便利なもの持ち合わせていない。やはり時代に逆らえないなあ、今度から用意しなければあかんかなあぁと思案はするが、発車まであと数分しかない。ふと傍らをみると入場証明発券機を見つけた。急いで券を入手し入場する。上りホームは反対側だ。エッチラと陸橋を渡る。ホームで女子たちと再会した。
やがて電車がやってきたので一緒に乗り込み座席を確保する。山爺のブログのハンドルネームを教えると早速スマホで検索し読み始めた。ウケている。結構・結構、青梅で立川行きに乗り換えて立川で女子たちと別れた。
西国分寺で下車し、武蔵野線に乗り換え南越谷へ、この間ペットボトルを2本飲み干した。完全に水分不足で半脱水状態に陥ってしまったようだ。20時頃駅に着いたが、もう行きつけの居酒屋に立ち寄り勇姿を見せるエネルギーは残っていない。とぼとぼ家路に着く。
今回の山旅は道迷い・水枯れの無人避難小屋に一人宿泊・山ガール遭遇と多岐に渡る体験があり面白い山旅となりました。特に山ガール、もとい!観音様達に出会えたことは誠にありがたい体験でした。観音様ぁ~ブログ見ていたらメールくださいな。
【狂歌】
・川苔の 山より下り 水も枯れ 困りしときに 観音現る。
・駅までは まだ遠かりし 山道で 観音現れ 水恵まれり。
【川柳】
・菩薩様 山で出会いて 水もらい
三ッドッケ山から蕎麦粒山・川苔山縦走 後編の項・・完
こんにちは!先日、山の神の分岐でお会いした女子2名の内のおばさんの方です。本当に心配していました。熱中症にならず、無事に家に帰られて良かったです。読んでいたら...深刻な話なのに面白すぎて笑っちゃいました~って才能ですね。また山でお会いしたいです!
返信削除返信ありがとうございます。ほんとに助かりました。
削除観音様の表現は大げさではなく本心です。(^ω^)