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2018年5月5日土曜日

残雪の安達太良山とくろがね小屋

4月22日(日)から23日(月)にかけて残雪が美しかった安達太良山へ行ってきました。評判のかけ流し源泉がある”くろがね小屋”に一泊しての山旅でした。









4月に入って天候が穏やかになってきたので、かねてから行きたいと思っていた残雪期の安達太良山へ行く計画を立てました。この山の特徴は中腹にかけ流し温泉付きの山小屋があるのが魅力です。

安達太良山のような中級山岳の残雪期は期間が短く、もたもたしていると雪が消えてしまい、どろんこの登山道を歩かねばなりません。

4月の上旬あたりが絶好の時期なのですが二本松駅から登山口のある奥岳温泉までのバス便がありません








4月中旬以降なら八ケ岳の天狗岳~硫黄岳あたりも積雪が安定、降雪も滅多にないので、へたれ登山者の山爺には絶好の目標です。

当初そちらに行こうかと思い、登山口までのバス路線を調べたのですが、土日しか登山口まで運んでくれるバスの便がありません。
健脚者なら山小屋1泊で十分縦走出来るのでしょうが山爺のように枯れかかった”やつがれ”には1泊では無理で2泊は必要です。

土曜日に入山すると月曜日の下山になってしまいます。うえーん、これでは帰れないではないか。しかたなく第二候補の安達太良山へ目標を変えました。

最近の登山口への移動手段は自家用車利用に押されて年々バス路線が消えてしまいつつあります。山爺のような単独行者にとっては車で相乗りなど叶わぬことで不便なこと、この上ありません。嘆かわしい時代になったものです。

安達太良山も4月21日からようやく登山口の奥岳温泉(安達太良山高原スキー場)まで土日のみバス路線が再開、運行されます。行くとすれば21日以降の土日しかありません。

一週間前から毎日、天気予報とにらめっこ、21日(土)から23日(月)までは天候が安定しているようです。しかも気温は30℃って、なにい!30℃だとお!なんという異常気候だろうか。しかも月曜日には、また13℃に下がるという。いったいどうなっているんだろう。これでは雪が融けてしまうではないか。道はぬかるんでどろんこ必定、服装選択や装備はどうする。

行こうか止めようか毎日さんざん迷った挙句、行くことに決定しました。最終的に後押しした理由は年齢からくる焦りです。”いつまでも元気で居られるわけがない、動けるうちが花だよ。” と、以前に会社の同僚から言われたこの言葉が、最近何かと浮かんできます。



木曜日にくろがね小屋に電話し土曜日の予約状況を確認すると泊まれるが40人以上が宿泊予定なので食事の提供は出来ない。自炊ならOKとのこと。

自炊はもともとするつもりだったので厭わないのですが40人を超えていたのでは、あの男湯の小さな湯船に文字通り小芋(入浴者×2個 (^0^))を洗うような混雑がみえみえだ。朝のトイレの混雑ぶりにも往生しそうです。日曜日の予約状況を聞くと20人くらいとのこと

天気予報でも土曜は晴れるが風が強いとの予報であったことも考慮して、日~月で登山することに決めました。問題なのは下山日の月曜は奥岳温泉から岳温泉までのバス便がないことですが、まあこの間は4kmの下り道だからなんとか歩けるべい。

二本松駅からの臨時バス便は、
8:15→9:05
9:28→10:15

の2便しかありません。9時28分の便に乗り遅れると計画自体がおじゃんになるので8時15分の便に乗ることにします。

このバスに乗るための鉄道時刻を検索すると大宮駅から6時30分発のやまびこ41号に乗らなければなりません。なんと我が家から一旦、東京方面に戻ることになります。

常識的には目的地方向の宇都宮に出て、それから郡山まで新幹線となるのですが早朝なので宇都宮までの下りの電車がないのです。ガビーン (´;ω;`)


最寄り駅から始発電車に乗り大宮方面に向かいます。車窓から日の出が見えました。

はて?日の出を見たのは何ヶ月?いや何年ぶりかなあ、いかん、いかん、すっかり怠けた体になってしまった。フーテンの寅さんではないが”日々反省の時を過ごしておりますれば”だなあ。

大宮駅に5時53分着、やまびこ41号は6時30分発だからしばらく時間があります。



二本松までの切符を自動券売機で購入し、ベンチで時間待ち、15分前にホームに登ってみたら驚いた。日曜というのに自由席のある1~5号車のホームにはすでに乗車待ちの人が並んでいる。

慌てて山爺も列に加わる。加わったのは良いが先発の列に並んでしまった。山爺の乗るのは次発でした。田舎もんはこれだから困るねえ。最近新幹線とはご無沙汰であるから仕方がないのです。

やっと山爺の乗るやまびこ41号がやってきました。ホームに入ってきた列車の中を覗くと結構お客が乗っている。日曜だというのに朝早くからどこに行くんだよ!って俺もそうだった。
冗談じゃないよ。『高い料金払わされた挙句、立ち席かよ』と不安になりながら車内に乗り込むと、混んでいたのは指定席で自由席はガラガラでした。3列席に一人で座り込み一安心です。さあ!一路二本松へGo !。

家を5時に出て大宮駅から件の新幹線にのり宇都宮到着6時54分、ここまで2時間近くかかってしまった。なんだかなあ。ずいぶん損したみたいだなあ。




郡山駅に7時24分到着、大宮駅から1時間もかからない。やはり新幹線は早いねえ、料金高いのが難点だがね。



在来線に乗り換えて、7時59分、無事に二本松駅前に立つことが出来、朝1の臨時バスの発車時刻に間に合いました。それにしても料金¥6890也は痛いなあ。




改札を出るとバス停には夫婦連れらしい登山者が二人だけ、まもなくもう一人が加わり臨時バスを持つことに。
・・あまりの少なさにいささか拍子抜けしてしまった。



駅前から残雪をまとった安達太良山の頂も見えます。おお、ついに来たぞう!

定刻通りに臨時バスが到着したので乗り込みます。朝が早かったのでようやく”うたた寝”が出来きます。

車中でうつらうつらする中、9時05分、登山口に着くことが出来ました。ここまでは計画通りです。



ここからは文明の利器であるロープウエイを利用させて頂きます。



900mの山麓から一気に1350mまで引き上げてもらいました。¥1000の出費だが、今の山爺には必要経費だ。



いやあ楽チン楽チン、数時間は歩かないで済みます。若い頃はロープウエイを利用する登山者を小馬鹿にしたもんだが今はそんなことはこれっぽっちもありません。どんどん利用させて頂きます。



安達太良山にも、いいものが出来たねえ。ゆらりゆらりと空の旅だ。それにしても、ゆらりどころか途中でゴンドラがやけに左右に振られます。


最初は端っこに載っていましたが、あまりに揺れるので車酔いみたくなってきたので、慌てて揺れの少ない中央に座り直しました。





外を見ると強い風が吹いています。どうなってんだまったく!、ついには、ゴンドラが時々止まるようになってしまいました。

何度も止まりながら、ようやく山頂駅に到着しゴンドラを降りると係員が『風が強くなってきたのでゴンドラの運転を中止する』と言ってきた。

聞けば、たった今、風速20mを超えたとか。『ええ~ここでそんなんじゃ山頂までいけるんかいな』

一旦、山麓駅に戻り、今日はくろがね小屋までにしようかと思いもしましたが。降りようにもロープウエイそのものが止まってしまい動きが取れません。

『乗せるだけ乗せておいてハシゴを外しやがった!どうすんだよ。』ホールに行ってみると観光者らしきおばちゃん達が5~6人いた。
『ロープウエイ運休だって!』
『あれ!〇〇さんは、どこいった!』
やがて長靴を履いたおばちゃんが外から戻ってきた。付近を長靴で散歩してきたらしい。
『雪がいっぱいで歩けない』
と、かまびすしいが、この方々こそはロープウエイが動かないと絶対に降りられない気の毒な方々だ。

15分くらいおばちゃんたちと雑談しながら、ザックからスパッツを取り出し両足に装着する。
『あれえ、山へ行く人は用意がいいねえ』
『あたしたちはどうすりゃいいんだい』
『そのうち動きますよ』
そう言うしかない。
『ほんじゃ、とりあえず出かけます』
『気をつけて』
10時少し前に強風吹く中、登山を開始する。なるほど残雪がたっぷりとある。樹林帯の中はさほど風は吹いていないが上空は風が唸りをあげている。トホホ、えらいことになってきたぞ。くろがね小屋に行くには、ここから尾根筋を登りきって安達太良山直下まで登らないと下山道はない。


踏み跡で雪面が凸凹しておりズルっと足を取られるので、早速この山旅に備え新調した新アイゼン(靴に付ける鉄の爪・・滑り止め)をつけてみる。

このアイゼンは紐で縛るタイプではなくゴムバンドで固定するので着脱が簡単です。

今回の残雪期の山のように着けたり外したりを頻繁にしなければならない残雪期に適しているのでは?と購入してみました。
通販のキャッチコピーに30秒で装着出来るとあったが、なるほど早い!両足付けるのに初めてでも1分ちょいで出来た。これなら慣れれば30秒で装着も誇大広告では無いかな?。


冬の間、18年度の山歩き計画をしながらAmazonのネット販売で以下のような山用品をせっせと集めました。購入目的は装備の軽量化であります。

爺の独り言】
    ①ミニコッヘル・・鍋・・③の小型コンロがなかにすっぽり入る。
 ②気圧・高度・温度・コンパス・時計内蔵の多機能計測器
 ③超小型コンロ
 ④19本爪、チェーン式、簡易アイゼン

いずれも価格激安で、万一使えなくともあきらめがつくものばかりです。
ところがどっこい、これらがすべて今回の山旅で威力を発揮するからmade in china 恐るべしである。ガスコンロなぞ¥780とタダ同然ながら圧電着火式できちんと一発点火しました。


 



























【山爺の一言メモ】

簡易アイゼンはしっかり雪面を捉えて十分応えてくれました。途中雪のない岩混じりの道を長時間歩きましたが爪が潰れることもなく耐久性もあります。欠点はかかと部分をしっかり上まで持ち上げておかないと外れてしまいます。(3回ほど外れた)爪の長さが短いので厳冬期の凍つた雪面で使えるかどうかは疑問です。

歩るいてみると誠に具合が良い。ズルっと横滑りするのがぴたっと止まった。こりゃあ、いいわいな。自称、山の専門家なんかは、こんな物は使い物にならないと、はなからダメ出しするんだろうなあ。

ところどころに踏み抜いた足跡があります。踏み抜きをやると体力を奪われて疲れるし、ヘタをすると怪我をする。

せっかく誰かさんが踏み抜いて危ない箇所を身を持って教えてくれているので踏み抜き跡の周辺は避けて慎重に歩く。




慎重に歩を進めるので行動が遅れがちになります。ほかのパーテイはどんどん山爺を追い抜いていきます。中にはかなり軽装のザックを背負っている人も・・どんな物がザックに入っているのかなあ。山爺のザックは減らしに減らしても14kg位もあるのです。

樹林帯を抜けて風が強くなってきたので野球帽から毛糸の帽子に換える。こうしないと帽子がすっ飛んでしまう。風にばかり気を取られていたら雪面に潜らないようにストックの先に付けておいたリングがなくなっていました。これ以降、時々ストックが雪面に刺さってしまい歩きにくい事といったらありません。リングの予備は持ってきていません。反省、反省です。
振り返るとロープウエイの駅が見えます。いつの間にか、ずいぶんと登ってきたものだ。

日当たりがよい山道になったので雪解け水が登山道をドンドコと流れてくる。まるで沢である。最初のうちは左右の土手に避難したりしたがそれも出来ない箇所が出てきて、仕方なく水中をざぶざぶ歩く羽目に。

と、先ほど山爺を追い抜いていった数組のパーティがぞろぞろ戻ってきた。
『どうしたんですか?引き返し?』
『道が違ってました。この先行き止まり』
雪道は登山道が隠れるので先駆者の足跡を頼りに歩くことが多い。誰かがルート間違えて歩くと、それに倣った者も同じ間違いを犯してしまう。




山爺は最後尾を歩いたので無駄な浪費をしないで済んだわい。わはは!!。

このパーテイのなかに、あるご夫婦さんがいた。この時点では当然ながら先に行かれてしまったが、登頂後、偶然に何度か山中で再会し宿泊先などの会話を交わした。このことがきっかけで、くろがね小屋で仲良くなり一緒に酒を酌み交わした。

一期一会、出会いというのは本当に面白いものだ。

大きな雪田に出ました。高度計をみると1500mを超えている。1700mの山頂までもう少しだ。頑張れ山爺!。

右、写真は自撮りしようとしたら下山途中の人に『撮ってあげます』と言われて撮ってもらったものです。背景の這松を抜けると稜線が見えました。

山道がなだらかになり稜線が間近になりました。おお!安達太良山の特徴である乳首が見えます。『乳首とは”H”ねえ』ですと!仕方がないではないか本当にそういう地名なんだからして。

鉄山方面の斜面に目をやると、すぐ上に夏道が顔を出しているのに雪渓を登っている団体様が望見出来ました。雪上訓練でもしているのでしょうか。
道が急になだらかになり、ようやく山頂直下の分岐点に到着です。


ここからくろがね小屋へ下るルートもありますが、幸い風も弱まってきました。

今回購入した高度計を取り出して確認すると1677mを指しています。山頂まではまだ岩山が20mほど残っているので、ほぼ正確な高さを表示しています。




おお凄いじゃん。安物にしては made in china もやるもんだ。ただし、この計器は時々訳もなく暴走するのが欠点だ。



我が家の居間は標高28mながら、いきなり3000mを表示することもある。俺んちは富士山頂か!・・・自然と元に戻るけれど、こいつ、どんな仕組みになっているのかなあ。


さて一息ついて体も楽になったのでここからはザックを岩陰に降ろして空身で最後の難関、岩山を登り安達太良山の山頂を目指します。途中数箇所、鎖場のある難所もよじ登らなければなりません。

途中に2箇所鎖場が付いています。鎖はあてにせずに3点確保で慎重に難所をクリアーし12時30分山頂を極めました。
先客が2人ほどおりますが一人は山頂のそばに座ったきり動こうとしません。

写真撮影には極めて邪魔な存在です。その人が映らないような角度で山頂の記念撮影をします。

山頂からは360度遮るものがない絶好の景色を眺めることが出来ました。

北には遠くに吾妻連峰が望めます。

西には会津の名峰磐梯山がくっきりと確認できました。









南は安達太良山連峰の和尚山がデーンと構えています。


東を見ると今日、登ってきた安達太良高原が裾野を広げていました。

眺望を満喫したので乳首から降りて、昼食です。風が強いので岩陰でお湯を沸かしながらいつものサンドイッチ、梅握りを頬張ります。

¥780で購入した小型コンロも期待を裏切ることなく圧電着火装置が作動、一発点火です。まいっちゃうなあ。こんな価格でこんなもの作られては!もの作り日本の将来が危ぶまれてしまいます。




食事をしているとわいわいと静寂を破って高校生らしき団体が現れました。その数およそ40人。さきほど雪渓を登っていた人々に違いありません。ははあ!この連中、おそらく昨日くろがね小屋に宿泊していたのかな?だから予約が一杯だったんだな?。いやあ、やはり予約しなくてよかった、よかった。





予定時間も遅れているので早めに山頂を辞して稜線伝いに牛の背まで移動しました。

短い間だけれども稜線歩きは実に楽しい。

振り返ると今登った安達太良山の乳首が見えます!

13時20分、牛の背に到着です。稜線から左側を望むと素晴らしいというか凄いというか、絶景を見ることが出来ました。沼ノ平というところで明治33年7月(1900年)に爆発してすっ飛んだ爆裂穴跡です。

この先には往復1時間のところに鉄山がありますが時間も超過しているので断念しました。



ここを右に下ると峰の辻を経由してくろがね小屋ですが、ここを降りると眺望は見られなくなります。



山爺の年齢を考えるとこの絶景もこれが見納めかもしれません。そう考えたらなぜか目頭が熱くなってきました。下りかけた道を引き返し、峠から10分以上もぼーっと沼ノ平の爆裂口を眺めてしまいました。



後ろ髪引かれる思いで稜線を離れ一路、今日の宿であるくろがね小屋めがけて下降開始です。午前中に高校生たちが登っていた雪渓は危険と思いリスクを避けて雪の消えた夏道をひたすら下ります。峰の辻に14:00到着。さっき登った安達太良山の乳首が名残惜しそうに、まだ見えています。

一服していると反対の稜線伝いに単独者が登ってきてすこし離れた場所に休憩しました。山仲間の気安さから会話をかわす。かなり安達太良山に詳しいお方のようだ。



先を急ぐので出かけようと、この人にくろがね小屋への道筋を確認した。

『くろがね小屋はこの道ですか』
と尾根筋の道を指さした。山爺はこの時、尾根筋を歩けば良いものとばかり思っていた。
『ちがうよ。そっちは別の場所に降りてしまって、くろがね小屋には行かない』
くろがね小屋へはこの辻から90度曲がって降りなければならないとのアドバイスを受けた。




危ない危ない!地図で再確認すると尾根筋を直進すると別の場所に行ってしまうことが分かった。やはり要所、要所では地図を広げて再確認しなければいけないなあと肝に銘じた。



また残雪が出てきたのでアイゼンを装着する。本当にこのアイゼン装着は簡単で負担を感じない。

雪の中を快適に下降するがそのうちに雪解けでどろんこ道も随所に現れだした。このアイゼンは爪が短いので泥道でもスリップ防止には有効に働いた。




悪路をひいひい言いながらようやく平らなところまで降りてきたので今日最後の休憩をしながら甘い物の携行食を取り出してエネルギーの補給をする。



休んでいると午前中何度か言葉を交わしたご夫婦連れが降りてきた。おや!とうに山小屋に入っているものと思ってみたが。

『鉄山まで行かれたのですか?』

『そうです』

いいなあ、鉄山まで往復したのか、山爺も無理してでも行けばよかったかなあ。と反省しきり。

『それじゃ山小屋でまた逢いましょう』と言って先に降りていった。



高度計を見ると1400mを指している。山小屋の標高は1350mだ。この計器が正しければあと50m降れば小屋だ。もうすぐ着けるぞ。着いたらビールだ。風呂だ。と邪心が騒ぎ出す。気張れ山爺、チェストぉ!!

ほどなく山小屋の屋根が見えてきた。後ろに登山者が数人いたので

『若い時は小屋が見えるとわくわくしたけど今では小屋が見えるとガクッと疲れが出る』
と冗談を言う。(この会話はウケました!)




外にある洗い場でスパッツの汚れと靴底の汚れを洗いお落としてから手馴れたふうに外したスパッツを手すりに乾す。





おもむろに館内に入って受付前に行く。頭上にはお品書きがたくさんぶら下がっている。

缶ビール¥420の文字が目に入る。おお安いぞ!ほかの山小屋は¥500が相場だ。ほかにも日本酒やワインの文字が!これは呑まねばなるまい。

小屋番さんと2~3言葉を交わしながら料金を支払い指示された6号室に移動する。小屋番さんも気さくで人当たりがよさそうだ。この山小屋は、県営なので2食付きでも¥6630(夏季は¥6320)と、ふた昔前の山小屋を思わせる安さなので慢性金欠病の山爺には有難い。

山爺は夜はお酒を沢山呑みたいので夕食を辞退している。したがって¥5090の安さです。

中部山岳地域では素泊まりでも¥6000なんてところもざらにあるし、2食付きだと¥8500以上は確実に取られる。北アルプスのある山小屋なんか¥10000を超えるところもざらだ。くろがね小屋が賑わうのも納得である。



部屋には既に先客が一人寝転んでいた。今日の部屋の相方は一人のようだ。山爺の割り当ては畳4枚以上で十分すぎるくらいの広さを専有できた。



相方さんは神奈川から来た方で山スキーを安達太良山山頂まで担ぎ上げて滑り降りてきた猛者であった。そういえば牛の背の雪渓にシュプール(滑った跡)があったのを思い出した。直滑降に近い跡であったのでかなりの腕前と推察した。たいしたもんである。


部屋が確保できたのでビールを美味しくいただくために先に風呂に入るとするか。
カメラとタオルを携えて風呂場に行く。中を覗くと幸い一人しか入っていない。

かかり湯をしてからざんぶりと湯船に・・ああ!!いい湯だ。これは堪らん。換気のために窓が空いているので外に目をやると一面の雪景色、文字通り雪見風呂を堪能した。

そうこうしているうちに誰もいなくなったので自撮りでパチリとやった。





風呂から上がり食堂に行くと、件のご夫婦が既にビールを飲んでいた。山爺も仲間に入れてもらい3人で山談義をしながら愉快な酒を酌み交わす。



夕食の時間になり山爺を除く全員が一旦テーブルに集合。ここ自慢のカレーがメインの夕食タイムになったので山爺はドライフードのにゅう麺で軽く夕食を摂る。(本格的に夕食を食べたら飲めなくなってしまうので夕食は付けてもらわなかったのです)


再び、ご夫婦が戻ってきたので酒盛りの再開です。ご夫婦は地元会津からだそうですが地元にも関わらずくろがね小屋は初めての訪問だとか。

ご夫婦からはワインやら日本酒(すべて小屋で販売)をご馳走になり、山爺からはウイスキーと酒のつまみを提供、お酒がどんどん進みました。そのうち山小屋の番人さんも山談義に加わり盛り上がります。いやあ、愉快、愉快これだから山は止められませ
ん。
山小屋の番人さんから風呂は8時半までと告げられていたのでお酒中断して2度目の入浴をしてきました。







風呂から上がり、またお酒。こうしてくろがね小屋の夜は深けて行ったのでありました。





お酒の力で寝床が変わってもぐっすりと眠ることが出来て朝の3時には早くも目が覚めてしまいました。その後はトイレに立ったりうつらつらで夜明けを待ちます。

相方さんは4時ころから、がさごそ荷造りを始めました。『やけに早いなあ、朝食は6時半からなのに』と訝っていましたが。いつの間にか荷物も当人も消えてしまいました。
スキー置き場に板がありません。朝食も取らずに早々とスキーで下山した模様です。

5時半に起床し荷造りやら洗面、用便、朝の外見学などして時間を潰して朝食を待ちます。

やがて朝食タイムの6時30分、くろがね小屋の朝食は山小屋にしてはなかなか充実しています。温泉卵の旨いこと、牛すじ煮込み?これもいいねえ。

腹ごしらえも終わったので2階に戻り荷造りを整えました。楽しかったくろがね小屋ともお別れです。

表に出てアイゼンを装着し出発準備を整えます。気温は13℃と全然寒くない。
会津のご夫婦も準備を整え出発準備は完了していました。7時15分いざ下山開始です。

小屋番さんが親切にも見送りのため表に出てきてくれました。

出発後、ご夫婦の方々は足は早いので、あっという間に姿が見えなくなってしまいました。



まだまだ雪のたくさん残る中を下山開始、下山道といえども急傾斜あり、雪の大陥没や踏み抜きありで油断は出来ません。
おまけにストックリングのないストックは、ずぶりと雪の中に入ってしまいバランスを取るのに往生します。帰ったら予備を購入しなくては・・・

気を抜くと事故につながります。一歩、一歩、慎重に足を進めます。1時間30分も歩
くと林道と旧道(登山道)の分岐に出ました。

旧道の方が近道なのですが、見ると薄暗いし、ぬかるんでいて荒れていそうです。



時間はかかるが林道の方が安全のようなので林道を使って下山を続けることにしました。
途中、何度も旧道を横切るので旧道に入りたい衝動にかられましたが我慢、我慢。

こうして9時40分に無事に奥岳温泉の登山口に戻る事が出来ました。あたり一体は霧で何も見えません。




月曜なのでここからのバス便はありません。岳温泉まで残り4kmの車道を歩かなければならないのです。

それにしても岳温泉方面はどう行けば良いのだ。昨日降りたバス停も霧でさっぱり見当がつきません。



地図を引っ張り出して磁石を合わせルート確認です。スキー場内をしばらく下るとロープウエイ山麓駅が見えました。

たしかこの道をこう降ればいいのかなあ。ここで道を間違えると酷いことになってしまいます。真っ白な世界の中、磁石を振りながら慎重に降りてゆきます。




昨日見たスキー場入口ゲートに無事着いて方向が確定しました。ここから岳温泉に向かってひたすら歩きます。とうとう小雨まで降ってきました。予報では曇のはずでしたが本当に山の天気はわからないものです。

車道は山道と違い歩くのは楽です。どんどん下って行きます。

標高が高いせいかこのあたりのツツジはまだつぼみ状態でした。




迷いもぜずに11時25分岳温泉まで降りてきました。温泉神社に黙礼して通過、バスターミナルに着くと同時にバスが到着、雨具を脱ぐ暇もないくらいのジャストオンタイムです。

温泉神社へ黙礼した事へのご利益かな?。(画像の時間表示は20分ほど進んでおります)

二本松駅に11時54分到着、上りである郡山方面の時刻を見ると11時57分発です。わあ~これでは土産を買うどころか顔洗う暇もないぞ、急ぎ切符を購入しホームへと駆け上がる。


こうして帰りはあの憎き新幹線を使うこともなく郡山→新白河→黒磯→宇都宮→久喜→最寄駅とスムーズに(数分待ち)在来線を乗り継ぎ16時には帰宅することが出来ました。

特急料金¥2590の出費を抑えることが出来たのはめでたい事であります。


【狂歌】

・雪深き くろがね小屋の湯船にて 暮れゆく山見つ 麦酒思わん。
・安達太良の 山より帰り しみ込んだ 硫黄の匂いで 小屋思い出し

【川柳】

・乗せといてハシゴを外すロープウエイ・・・おいおいどうやって帰るんだ。
・くろがねの 硫黄臭が まとい付き   ・・強烈な匂いで我が家の洗濯機まで
・雪山は 見納めかなと 涙ぐみ   ・・老いるとは悲しいことです。
・新幹線 欲しがりません 熟年は ・・・時と金は常に表裏一体
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