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2023年7月2日日曜日

川崎・生田緑地あじさい山と日本民家園

 コロナによる自粛生活が長かったせいなのか、はたまた老いが進んで出かけるのが億劫になったのか判らないが、とんと出かける機会が少なくなった。たぶん後者の影響が大なのだろう。いかんなあ、じっとしているのは楽だけれど老化を促進してしまう。山でも行こうと思うのだが天候は連日雷予報が出ておりさっぱり良くならない。

ちまたでは紫陽花が咲いているだろうに・・・いつものようにGoogleマップで紫陽花の咲く名所と打ち込んで検索するとあじさい山という地域が数件ヒットした。秩父の美の山は有名だが山頂までの道中が長い。途中で雷に遭遇したら避難するのに難儀する。

向ヶ丘遊園のあじさい山、ここなら低山も低山、30分もあれば山頂だ。そばに川崎市立日本民家園もあるので紫陽花を撮り込んで古民家が撮れるかも知れない。


というわけで天気が回復した6月17日(土)いそいそと出かけてみた。日本民家園は6~7年前に一度訪れたことがある。

早朝に家を出でて北千住から千代田線で代々木上原へ、ここから小田急線に乗り換える。この手順は丹沢登山で何度か利用しているので勝手は分かっている。

丹沢登山は始発の新宿駅から小田急線に乗り換えるのが一般的だが新宿駅は何せ巨大な駅だ。乗り換えに時間がかかる。この駅なら電車を降りると反対側が小田急線下りホーム、乗り換えが徒歩ゼロ分という至便さだ。

ここから向ヶ丘遊園駅までは駅が沢山あり何となく遠そうに見えるが急行を利用すれば1~2駅停車するだけ、約15分で到着する。

向ヶ丘遊園駅の南口から15分も歩けば日本民家園に到着だ。今日の主役はあじさい山なので民家園は後回し。

民家園の正門から下に降りて菖蒲園沿いを歩く。あいにく菖蒲は時期を過ぎてしまっていた。

ぽつん、ぽつんと咲いている菖蒲を見ながら5分ほど歩くと科学館前の広場に出た。

広場には客車やSLのD51が展示してあり芝生には思い思いにシートを広げた家族連れがくつろいでいる。

山爺にもこんな至福の時期があった。人生過ぎてみるとあっという間だなあ。幼い子らの走る姿と小さいころの我が子らの思い出が重なる。

笑い声の絶えない芝生を横断してあじさい山の山道へ入る。

おお、今を盛りに紫陽花どもが・・どもって、偉そうに・・咲いてくれています。
白、ピンク、青、紫、ほどよく色が混じり合っています。

自然にはこうはならない。たぶん庭師やボランテァの皆様が日頃より丹精込めて手入れし、バランス良く配置しているのに違いない。


紫陽花が満開の中、山道というより散策路というほうが正しい道を撮影しながら歩く。実に楽しい。






紫陽花の別名を手毬花と言うんだそうで、なるほど言い得て妙ですなあ。

あじさい山は100mにも満たない丘のような山だ。山頂はすぐそこと登り続けていたら突然の通せんぼ。何?何?この先倒木により危険なので通行止めとある。

登山道なら倒木なんぞ当たり前でそれくらいのことで通行止めはありえないがここは幼い子供連れが多く訪れる公園だ。万一のことを考えての措置だろう。仕方がないので山頂を見極めることなく引き返す。

さて日本民家園の正門に戻ってまいりました。ここは有料で入場料は大人¥550ですが65歳以上は¥330の割引特典があります、ありがたや。特典に預り早速中に入りましょう。


当園は1967年開園というから相当古い。当時急速に消滅しつつある古民家を保存しようと全国から23の古民家を移築したものです。建築物の他、道祖神や野仏なども保存しています。園内に入ると正面に宿場町のような門が待ち構えてます。

正面に見えている建物は福島より移築した鈴木家(馬宿)で19世紀初期の建造。

井岡家、油屋の文字が見えます。奈良県柳生街道で油屋を営んでいた家です。18世紀初期の建築です。
井岡家の内部です。井岡の暖簾がいいですねえ。当時を忠実に再現しているので照明は少なめ。当時こんなに暗い中で商売をしていたんですね。




長野県伊那部地区で薬屋を営んでいた三沢家です。19世紀中期の建造。
屋根に石を乗せて風対策をしている時代劇でお馴染みの作りです。

代々組頭を努めた家柄なので門構え・前庭付きを許されたとか。

道祖神が道端に佇んで時代を演出してます。
これも全国各地から移設したものです。
長野県長野市から移設された水車小屋
19世紀中期のものですが動態保存、ちゃんと水車が回ってます。

今の時期なら紫陽花と古民家が重なるはずとの山爺の読みはドンピタリ。紫陽花と水車小屋、絵になるねえ。と、ひとりごち。
長野県千曲川沿いの名主の家、佐々木家です。18世紀中期の建造。

奥には合掌作り家も見えます。
佐々木家の内部です。磨きぬかれた床板と囲炉裏が素晴らしいです。

『庄屋さまぁ、今年の年貢はどんな塩梅かね』
なんて村人の声が聞こえてきそうです。
富山県南砺市、越中五箇山の合掌作りの家。
江向家、18世紀初期の建造。
中を覗いてみると囲炉裏に火を焼べている人が見学者と語らっています。

合掌造りの家はこうして定期的に火を入れてすすで全体を燻しておかないと家がもたないんだそうです。

以前何かの報道番組を見て山爺が覚えたエピソードですが、合掌作りの村落で当時流行りだした石油ファンヒーターを便利とて相次いで使いだしたところ、どの家も家のいたるところに虫が湧き出し大騒ぎになったとか・・・現代の科学に勝る先人の知恵もあるんですねえ。

岐阜県大野郡、いわゆる飛騨白川郷の合掌作り。19世紀前期。ここはお蕎麦屋さんとして実際に営業してます。

先ほど見た水車小屋は水車が回っていた。扉が厳重に施錠されていたので、もしかしたら中でそば粉を引いていたのかもしれないな。







値段も街中と変わらずお手頃なのでお蕎麦でもたぐろうと中を覗いたら折しもお昼どき、お客で一杯でした、残念。


作田家は修繕の真っ最中でした。
千葉県九十九里網元の家だそうな。17世紀後期の建造

こうして定期的に手入れして保存しているのですねえ。
ご苦労様です m(_ _)m
山梨県甲州市、広瀬家 17世紀末期の建造

ニューギニアや縄文時代の三内丸山遺跡の家屋に似てませんか。

日本の家屋は古代より暑さ対策を主体に作られた。だから高い天井と藁屋根が採用され続けたと山爺は思います。


シベリヤの極寒と違い日本の冬は着込みさえすれば凍死することはない。しかし暑いのだけは対処のしようがない。人間、裸以上にはなれないもんねえ。(^^♪

藁屋根なんか時代遅れと思うなかれ、藁は格好の断熱材であり湿度保全の効果も持ち合わせている。使い続けたのには科学的根拠があるのだ。

実際、今日は屋外は30度に届こうという陽気で歩いていると汗をかくが藁屋根の古民家に入るといずこの家屋もひんやりとしている。まるでクーラーの効いた部屋に入ったようだ。

火守りの係員に聞いても風が吹き抜けるからクーラーなくても凌げるよと答えてくれた。

何でもかんでも電気と文明の利器に頼るだけの現代人、そろそろ古人の知恵に学ばなければならないのでは?。

上の画像は鹿児島県沖永良部から移築された穀物収納小屋 19世紀後期。いやあ、まさに日本全国から移築してますなあ、恐れ入りました。ねずみの侵入を防ぐための4本の柱、その上部に穀物を収納する空間がある。

木枯らし紋次郎が出てきそうな雰囲気ですねえ。
『おめえ様はどちらに行くだかねえ』

ひょいと百姓姿の村人が出てきそうです。


こんなものまで移築してました。屋外の便所です。山爺の幼い頃はこんな農家がたくさんありました。

我が家は幸い街中だったのでこういう便所体験はないですが、こんな便所があったら夜中に一人でいくの怖かったろうなあ。
だから我慢する⇒寝小便、ってか。(^^♪
神奈川県多摩地区の船頭小屋 昭和4年
簡易な小さな小屋で寝泊りは出来そうもありません。

昼食や休憩に使用したのでしょう。
船便の都合とかで小屋の両方に担ぎ棒を差し込んで都度、ひょいと移動させて使っていたようです。そんな挿絵がありました。
古民家と紫陽花、似合いますねえ。

神奈川県川崎市登戸から移築の清宮家
17世紀後期の建造
神奈川県愛甲郡清川村から移築の岩澤家
17世紀末期の建造
中は広い板の間で機織り機が置いてあるので養蚕農家を営んでいたのかな。

それにしても藁葺き屋根と板の間家屋がこんなに涼しいとは、・・・勉強になりました。

ひょっとすると床が土間なのも貧しいのではなく暑気対策の一つなのかもしれませんね。

縄文から古墳時代まで庶民の家は竪穴住居でした。

竪穴式住居は見かけによらず冬は暖かく夏は涼しいんだそうです。藁と土間が湿度を一定に保ってくれるので居住性は抜群。

故に水害のリスクを冒しても使い続けた。
見かけだけで原始的な貧しい生活だなあと思うのは認識不足というものです。
三重県志摩市船越にあった舞台です。
安政4年(1857)だから幕末のころですね。内部に回り舞台の仕掛けがありました。

さて、ここが民家園の最頂部です。知らず知らずのうちに随分高いところまで登ってきました。

ここから西門出口がすぐそばにあり遊歩道沿いに正門まで戻れます。

多くの観光客はそうしてますが山爺は撮り残した被写体がありそうなので元来た道を戻ることにしよう。

【川柳】
・藁葺きを 粗末とみるか 訳知らず
・藁と土間 見かけによらず 科学かな
・まさるのは いずれや 縄紋と今 

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