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2023年4月12日水曜日

老骨に鞭打ち残雪期登山(那須茶臼岳登頂残夢録)


 2019年の5月に谷川岳に登って以来、残雪期の登山をしていない。あの時は季節外れの30℃超えの猛暑に見舞われ暑さと老化現象が相まっていささかバテ気味で山小屋にたどり着いた。猛暑により雪面は溶けた状態だった。合成繊維の登山靴では防水加工されているとは言え結局、内部に水が少々侵入した。まあ普段靴の手入れをろくろくせずに履き続けので防水膜がすっ飛んだのが最大の要因ではあると思うが・・・

やはり残雪期は革製登山靴に限るのかなあ。革製登山靴は若い時に履いていた歴戦の革製登山靴が一足あるにはあるが、靴底がすり減り、手入れ怠ったので内外ともカビだらけのガッビガビ~。とても履けたものではない。

そんなわけで新しい革製の本格登山靴が欲しくなった。しかしながらあと何年山歩きができるか分からない。新品購入は高額で贅沢だ。ここはヤフーオークションに頼ろう。

というわけで気長にヤフーオークションで入札を繰り返し、負け続けること数回、ついに中古品ではあるが(数回履いた程度と説明書き)本場オーストリアのKastinger社製 26cmの物件を格安で落札した。2020年6月のことである。

手元に来るまではどんな代物かいささか不安だったが、届いてみるとこれが新品と変わらない。¥5280なら安い買い物だろう。

履いてみるとピッタリで誠に具合が良い。そのまま家の周りをぐるぐると歩いてみる。まるで新しい靴買ってもらったときに嬉しくてはしゃぐ子供の仕草だ。古希がとうに過ぎた爺様のやることではない。(^^♪

具合は良いが重たい。片側で900g、合成繊維製の倍以上ある。こんなに重たくちゃあ無雪期には無用の代物だなあ。コロナの流行も相まって爾来、靴箱の主と化し隅に鎮座し続けて早3年近くが過ぎた。手入れだけは時々クリーム塗ってやりましたけどねえ。


今年こそ残雪期の山へ行かねばと奮起し3月20日以降連日天気予報とにらめっこ・・桜が咲く頃は北の寒気と南の暖気がぶつかり合い天気が悪い。今年も連日の雨模様だ。ようやく28日頃より好天が続く予報が出た。ついに革靴くんの出番が来たのだ。

それにしても山爺、谷川岳の時はピッケルを新調したから、今回は革靴買ったからと、出かける動機が相変わらず逆だなあ、我ながら呆れた。普通の人は行くから買う、山爺は買ったから行く。笑えるわ。

情報によれば今年も暖冬で、もはや積雪は少なそう。ピッケルも出番はないかも知れないが買ってから1度しか使っていない。かっこ付けのためザックにくくりつけた。

出発は3月30日(木)場所はロープウエイが使える楽チンコースにしよう。那須の茶臼岳に決定。ここなら若い頃から厳冬期も含め何10回も訪れているので勝手が判って安心じゃ。

下山後は旅行支援を利用して塩原温泉でのんびりし、翌日は付近の渓谷を散策じゃ。

3月30日の早朝に家を出て、那須ロープウエイ山麓駅に9時30分頃到着した。お天気は風もなく上々。ロープウエイも動いている。片道切符を買おうと自販機に行き料金表示を見て驚いた。下調べでは¥950のはずだが、こんなところまで値上げの余波が・・・げげっ、¥1200だとお!¥250も値上げかい!ロープウエイは100%電気がエネルギーだから仕方がないか。

さらに切符出口に雷に注意の張り紙がある。
『なんじゃあ、これは』

係員のおばさま曰く『雷注意報が出ていますのでお早めに下山してください・昨日も午後から雷が出ました』

『ええ~!雷様出るんかい・弱ったなあ』

禿山の茶臼岳山頂で雷様に出くわしたら避難する場所がないゾ、えらいことになったなあ。

切符買っちゃったし、とにかく行くしかない。様子が変わったらロープウエイ山頂駅に駆けも込もう。

山頂駅に10時10分到着。


表に出て観望、天候状態の様子を見る。良い天気だ。登山道に雪はほとんどなし。これではチェーンスパイクもスパッツ(足に巻くゲートル様の装備)もいらないなあ。ピッケルなんぞお荷物そのもの、重いだけで役立たず。

雷公めのご降臨は恐らく3時以降だろうと正常性バイアス思考を発揮して、いそいそと出発。山頂が見えます。あれえ、山頂ってあんなに遠かった?

【山爺の一言メモ】

正常性バイアスとは

人が危機や以上に直面したとき現実を認めず自分に都合の悪い情報を無視したり過小評価し楽観してしまうこと。『まあ、俺の身にそんなことが起こるはずがない』という能天気な感覚ですわ。この行動心理は悪く扱われる傾向にあるけれど、いざ危機に陥ったとき正常性バイアスを持ち合わせていない人は逆に危険でもある。ビビって1歩も動けなくなる恐れが・・もちろん100%持ち合わせる人はもっと危険、予知能力が乏しく、匹夫の勇で即戦死。(^v^)

お山に雪がなくて拍子抜けですが、左から吹く風の冷たいこと。家を出る時から着ていたアウターが脱げず着っぱなし。

右手に偽穂高の異名をとる朝日岳が見えます。例年今頃は雪をまとっているはずなのですが長雨で溶けてしまったのでしょうか、ほとんど残っていません。

左手に目をやると黒雲が確認されます。冷たい風はそちらから吹いてきています。
まずいなあ、雷雲かなあ。耳を澄ませて聞き耳を立てるが聴こえてくるのは風の音だけ。

念のためラジオを取り出してNHKに合わせて見る。雷発生時に出るガリガリ音は出ていません。ただの雨雲のようで一安心。

ずいぶん高度を上げました。秀麗な朝日岳の全貌が現れましたが雪化粧が皆無で景観イマイチ・・・残念です。

それにしても山頂が遠いなあ。ロープウエイ使っての茶臼岳登山は20代後半以来だ。あの時はひょいと到達したような記憶しかありません。

もう2時間近く登り続けているのに山頂は見えません。こんなにキツかったかなあ。

これが老いると言うことなのでしょうねえ。情けないことです。

ようやく前方に山頂の鳥居が視野に入りました。うへえ、まだあんな先だわ。参ったなあ。頑張らなくちゃ。


12時にようやく山頂にたどり着きました。コースタイムの倍近くかかっていますが途中、写真撮ったり雷様の確認作業もあったりしたから・・・遅れました、はい。(*゚▽゚*)

先ほど右手に見えていた黒雲がついにやってきて山頂を覆い出しガスの中、寒い!!。せっかく持ってきたピッケルなのでこれを持って山頂の祠を入れての記念撮影。

岩陰に避難して急ぎ昼食をとります。メニューはサンド・助六寿司と熱いミルクセーキ。寒い環境での暖かい飲み物は誠に旨いものです。ガスコンロ持ってきて良かった・良かった。

あんなに晴れていたのに一点俄かに、かき曇り、アラレ様の雪が降ってきました。これだから山の天気はわかりません。

こんなところに長居は無用、茶臼岳は活火山、お鉢周りしながら下山しよう。

火山だけに大きな岩がごろごろ、浮き石も沢山あり一瞬たりとも気が抜けません。うっかり乗って転倒したら無事では済まされません。



長雨のせいか珍しく火口に池というか、水たまりが出来ています。これも火口湖??
茶臼湖の出現です。


おおっと、初めて大きな雪田が現れました。
なだらかなのでチェーンスパイクは使用せず踏跡に足を重ねて慎重に下ります。
またまた雪渓が現れましたがその先はまた露岩だらけのルート、チェーンスパイクの出番はまだまだ。
下りでの休憩ポイント、峰の茶屋避難小屋(赤丸)があんなに小さく見えます。

ええ~!!あそこまで下るのかいな、大変だあ。ヽ(`Д´)ノウワァァァン

山頂から避難小屋まであんなに離れていたかなあ、若い頃の記憶が大分曖昧になってきました。
雪をまとった左後方の尾根は三斗小屋温泉に続く尾根。

三斗小屋温泉(大黒屋)が越冬常駐していたとき真冬(正月)に何度も通った馴染みのルートです。

通年営業がなくなってからはご無沙汰ですが今となっては真冬の通過は夢のまた夢。

岩のゴロゴロするなか慎重に下り続けてようやく峰の茶屋避難小屋まで降りてきました。

ここまで降りてくれば一安心。もう危険箇所はありません。時計を見ると午後2時。

心配された雷様も遠慮してくれたようで天気も回復の兆しが出てきました。
避難小屋は目立つ扉は蟄居閉門のようにバツ印で閉鎖してありますが裏側が空いてました。

何10回と訪れている那須連山ですが茶臼岳登頂は意外と少ない、今度で5回目?くらいかなあ。
後方に見える朝日岳は夏冬含め数多く登っていました。これが最後かも知れないので記念にパチリ。

それにしても朝日岳、かっこいいなあ。
左画像の下り口は三斗小屋温泉に至る最短ルートの下りです。どこにも登らず正月にここ経由で何度も大黒屋を往復しました。

ここ峰の茶屋(峠)は風の通り道。厳冬期はいつも強風が吹き荒れる難所で往生しながら峠越えをしたものです。(ピッケル刺しながらほふく前進を強いられたことが何度も)

こうやってみるとずいぶん急だったんだなあ。アイスバーンのときもあったけど滑落したら一巻の終わりだったじゃん?

後方のピークは朝日岳経由で三斗小屋温泉に至る尾根の途中にあるピーク、隠居倉1819mです。ここで地吹雪の中、昼食を採ったこともあったなあ

思い出で感傷に浸るのはここまで。まだまだ下山しなければなりません。

ずんずん下るといよいよ雪が現れました。ここから先は登山口まで雪が続くに違いない。

チエーンスパイクを装着して安全確保。

登山に限らず、物事は得てして万事、もう少しというところで事故は起きるもの、面倒だからと横着を決め込むのは剣呑です。


予想通り雪の連続でした。しかも溶けてぐちゃぐちゃ・痩せてとんがった箇所もあり油断がありませんでした。

登山口に無事降り立ちました。雪が少ないなあ。昔は3月末でも鳥居はてっぺん近くまで雪に埋もれていた。

ここまでくればロープウエイ駅まであとわずか、道も安全です。

15:40無事にロープウエイ山麓駅に戻ってまいりました。
さて、今夜の宿 塩原温泉の八汐荘に急ごう。

【塩原温泉で温泉ざんまい】・・・翌日はやしおコースの散策です。


八汐荘は新スタイルの旅館です。基本は素泊まりの宿です。いわゆる旅館でのいたれりつくせりの世話はありません。部屋には空の冷蔵庫が置いてあり持ち込み使用が自由。

夕朝食は幕の内弁当が提供されます。

フロント前にショーケースに入った冷凍幕の内弁当5種が常備してあり朝夕好きな時間に引き取り電子レンジで温めて食べることができます。これで料金は¥5200(入湯税¥150別)と格安です。

こんなシステムですからチェックインが遅くなっても大丈夫、山歩きする者にとっては下山時間が読めないのでこんな宿の方が便利です。

施設はもともと大規模旅館が身売りしたものなので安かろう・悪かろうではなく部屋は広く清潔でバストイレ付き。温泉も大浴場と露天風呂があり広くて湯量豊富、文句のつけようがありません。

これに比べたら今日日の山小屋は素泊まりで寝具の提供もなく雑魚寝状態で¥6000~¥7000 特権に胡座かいた殿様商売ではいずれ滅びる運命でしょう。少しは営業努力をしないとねえ。現に昨今、土日営業だけの山小屋が多くなりました。

今回は旅行支援キャンペーンを利用させてもらったので宿代はさらに20%引き、地域クーポン¥2000頂きましたので申し訳ないくらいお安く利用させてもらいました。ありがたや・ありがたや。

さて、翌朝も良い天気です。朝風呂入ってフロントで鮭弁当を受け取り、電子レンジでチ

ンすること5分、サーバーから無料コーヒーを汲んできて朝食・『うん、旨いじゃあないか』山爺、至福のひと時です。・・って、こんなんで至福とは、安上がりな性格だねえ。
塩原温泉はモデルとなるハイキングコースや散策路が数多くあります。さて、天気も良いので2時間弱の渓谷歩きでもしよう。今日あたりは早咲きのヤシオツツジが咲いているかな?。やしおコースでも歩いてみるか。



七つ岩吊り橋停留所から吊り橋を渡ってビジターセンターへ。


おお、コース名のとおりヤシオツツジがきれいに咲いています。
ちょいと、時期的に早いかなと思っていましたが、満開じゃあないか。期待していなかっただけに感激もひとしお。
福渡橋から渓谷に降りて渓谷沿いを歩きます。
途中でヘルメットにライフジャケット?を着た大勢の人に遭遇しました。4月2日より渓流釣の解禁で今から渓流魚を放流するようです。いつもなら半纏に向う鉢巻姿で放流するのでは?( ^ω^)今日はやけに出で立ちが物々しい。京都で渓谷下り船が転覆、船頭が死亡という重大事故が起きたばかりなので関係者からのお達しなのかも知れませんね。急流では水位がひざ下くらいでも転倒すると流されて起き上がれず溺死する恐れがあるとか。渓流を舐めてかかってはいけません。ヘルメット・ライフジャケットで作業は正しい装備なのかも。

岩の湯通過、ここは公共露天風呂でした。¥300で誰でも入れたので山爺も何度か入ったことがあります。吊り橋のそばにあるので観光客から丸見え。いまは土砂崩れの恐れがあるので閉鎖・廃墟となっているようです。ここからは山道です。
木々に囲まれった不動の湯に到着です。ここも風情ある良い公共湯で山爺も入浴したことがあります。登山道沿いにあるのでハイカーから丸見え温泉。これが災いして閉鎖に追い込まれました。
閉鎖の理由は
①ワニ族の出現
ワニ族とは近年の秘湯ブームで勇敢な女子の入浴客が出現、これ目当ての下衆な輩どもが付近の藪に隠れていて女子が入るとやおら衣服脱ぎ捨て一緒に入る・・ワニが獲物狙う様に似てるのでワニ族と命名
②同一の若い男女グループが月に1回の頻度でやってきて卑猥行為に及ぶ。(避妊具をあたり構わず投げ捨て)
③映画屋が卑猥映画撮影

そんなうわさ聞きつけた映画屋があろうことかここ舞台のエロ映画撮影

これに怒った塩原温泉観光協会は湯の供給を止めて閉鎖してしまった。という顛末です。                 本当に世の中、馬鹿が多くて困ったものです。ほんのひと握りの助平親父どもや低脳な若者どもの行動でせっかくの風情ある施設を台無しにしてしまいました。いまは代わりに足湯が新設されましたが、そんなもん、誰も入らんわ。
小さな沢沿いによく整備された散策路が続いています。こんなによい景観の途上にあった野趣あふれる露天湯の閉鎖は本当に残念でなりません。犯行に関わった助平親爺やゲス野郎どもめ、その罪、万死に値じゃ。

途中、何度もヤシオツツジが咲き誇っていました。










周りの木々はまだ新芽が膨らんだばかり。ヤシオツツジって早咲きなんだなあ。

と、傍らに茸のようなものが・・・電気工事に使う絶縁碍子のようです。なんだってこんなところに落ちてるんだ??謎です。
布滝(ぬのたき)の観瀑台が見えました。案内パンフレットに布滝観瀑台とあるのでさぞや立派な滝だろうと期待していたのですが、ん、ん、滝?これが?ただの急流じゃん。
こんな滝なら山に入ればいくらでも見ることができます。

目を右に振ると渓流の中に釣り人がいました。赤丸印、渓流釣解禁は4月2日なので今日は解禁前、しかしながら今日の放流日を何かで知ったための確信犯に違いない。ずるい人はどの趣味にもいるんだなあ。

それにしてもどうやってあそこに降り立ったのかなあ?左は布滝・右は絶壁が遮って左右からの侵入は不可能。付近にゴムボートもない。恐らく赤点線に沿って降りてきたに違いありません。足滑らして落ちたらただではすみません。釣り人とはなんと無茶をする人種であることか。




やしおコースの終点、箒川ダムに到着。これでダム?可愛らしい小さなダムです。このダムを渡れば車道に出られますが車道までがひと登り、しんどい。11:30やしおコース散策終了。
車道に上がって見下ろした布滝です。なるほどここからなら滝に見えなくもないなあ。

先ほど見た釣り人が居ません。移動したのかな?でも左右は塞がっているし。まさか釣りに夢中になり渓流に落ちた!!
Σ(゚д゚lll)。

さて、腹が減ったゾ。竜化ノ滝バス停はこの近く、そこから八汐荘のある街までもどり塩原名物のスープ焼きそばでも食してみよう。
門前温泉?にあるこばや食堂ではスープ焼きそばなる奇妙なフードメニューが話題になっておりテレビで何度も放映された。塩原温泉愛好家の山爺としては食レポせねばなまい。

店に到着すると平日だというのに行列ができている。待つこと20分、やっと店に入れた。
客のほとんどがスープ焼きそばを注文している。厨房から匂ってくるのはソース焼きそばの匂いそのもの。

すぐに山爺のもとに珍品が運ばれてきた。
まず、スープを飲む。鶏がら味のラーメンスープだ。次に麺を頂こう。やあ、こりゃあソース焼きそばそのものだわい。美味しいなあ。

食べ進めるうちに麺とスープが混ざり合い不思議な味に変わった。食べ終わった客席の丼を見るとスープをたっぷり残している人もチラホラいます。好みの分かれるところかなあ。お店のご主人!私は美味しかったですよ。

【川柳】
・古希も過ぎ こんなはず連呼の 山、ゴルフ
・破廉恥な 輩に潰さる 野趣湯かな 
・山屋より 釣り師得てなる 岩登り
・焼きそばと ラーメン混血 こばや店
・繁忙で 誤て作りか 汁焼麺

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